認知症の周辺症状(問題行動)軽減に効果的なバリデーション実践レポート

テレビ放映される認知症特集の番組を見ると、「徘徊、もの取られ妄想、暴言、不潔行為等」、将来が不安になる内容が多いですよね。

対処方法を知っていると、とっさの時に役に立ちます。その知識が家族だけでなく、自分の心や身体をも守ることにつながります。

今回のブログは、介護手法”バリデーション”との出会い、母の周辺症状の時に実際にどのように対応したかの事例と、接し方のヒントについてまとめます。

認知症の症状

認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分かれます。

認知症では、加齢による脳の病的な変化や病気などによる脳の障害により脳の細胞が壊れます。その脳の細胞が担っていた役割が失われることで起こる症状を「中核症状」と言います。

                                          引用元:認知症ねっと

中核症状の主な症状として、記憶障害・ 見当識障害 ・理解判断力障害・ 失語・失行・失認等があります。

私の母の場合、今自分が何歳で、家族が誰で、どこにいるのかが分からなくなります。

認知症の行動・心理症状(BPSD)は周辺症状とも呼ばれており、中核症状が元となって、行動や心理症状に現れるものです。
                                       引用元:認知症ねっと

以前は、問題行動と呼ばれていましたが、脳の変化や病気による症状のため名称が変わったそうです。

主な症状としては、不安・抑うつ・徘徊・不潔行為・もの取られ妄想・せん妄・暴力や暴言・帰宅願望・昼夜逆転等があります。

詳細をお知りになりたい方はこちらもご参考にしてみてくださいね。→ 認知症ねっと

 

うちの母のケース

母「お父さん、今日は仕事にいかなくていいのすか?」

父「俺たちはもう80歳過ぎてとっくの昔に辞めたんだ。」

母「気仙沼にいつ帰るの?」

父「津波にやられで、もう帰る家はないんだ。」

母「おばあ(育ての母)はどこに行ったべ?」

父「ばーさんはとっくの昔に死んだ」

父は本人によかれと思って本当のことを言います。

それを聞いた母はパニック気味になるので、私に緊急要請が来ます。

徘徊して一度警察のごやっかいになったこともあります。

その時は11月ぐらい。寒いのにパジャマで2キロぐらい離れたピザの宅配の方が保護してくださいました。

バリデーションとの出会い

ある日パートナーから、「この本あげる」

”バリデーションの誘い(認知症と共に生きるお年寄りから学ぶこと)”

 を手渡されました。

認知症を生きるということ

・・・ひとつ、ひとつ、長年かけて得た大事なものを失っていくということ

・・・しかし、大事なものを、どんどん失うことすら、わからなくなるのではない。

・・・感情は残っているので、喪失感はつのっていく。

・・・たとえば、記憶を失い

・・・さらに、今自分はどこにいて

今が何月何日で季節がいつなのか

目の前にいる人は誰なのかもわからなくなる。

・・・それは、どれほどの悲しみ、不安、喪失感であろうか。

これを読んで私は、ハッとしました。

やはり、「本人が一番辛いのだ」ということを思い出せたのです。

どうしても介護をしていると、時間が取られます。

予定も立てにくいし、キャンセルせざるを得ない時もたまにあります。

すると、精神的にすさんできて

「やってやっている」モードになっちゃうんですよね。

するとなにもかも雑になり、そんな自分が嫌になる。

その負のスパイラルから抜けることが出来たのです。

バリデーションの実践

デラコ「あ、お母さんはとっても不安なんだなぁ」と気づいてから、 母への向き合い方に変化が起きました。

ある日、親の家にいったら

父「今日はお母さんの症状が重くて嫌になって、おれまで頭がおかしくなってしまった。」と不安をこぼされました。

その時にバリデーション的アプローチを試みました。

バリデーションの基本的態度

  • 傾聴する
  • 共感する
  • 誘導しない
  • 強制しない(受容する)
  • うそをつかない。ごまかさない。

これを全部するのは、身内に対してこそ難しかったりします。

傾聴と共感にトライ

リビングのソファーで父を誤認して興奮する母のとなりに座り、

父がいかに自分を拒否したか、こんな思いをするぐらいなら死にたい、気仙沼に帰りたいと言う母の背中をさすりながら、

やわらかなまなざしで、うなずきながら、時々母が言ったことを伝え返しました。

母の言い分は、

体調が悪く身体のあちこちが痛い。

自分でも何を言ってるのか訳が分からずに不安だ。

こんな自分が生きていても迷惑なのではないか・・・

という内容でした。

それに対して私は、うんうんとうなずきながら

「痛みがあるんだね。つらいねぇ・・・」

「お母さんが言ってること、わかるよ。伝わっているよ大丈夫。」

「家族なんだから迷惑に思ってないよ、心配しなくて大丈夫だよ。」

すると、徐々に落ち着きを取り戻して来ました。 

30分ぐらい経った頃、

夕飯時だったので、「おなかすいていない?」と聞いてみたら

母「ちょっとね、食べてみようかな」というので、

入れ歯が入っていないから、バナナと豆乳にオリゴ糖をいれたスムージーを作ってあげました。

水分も足りていないから、経口補水液も飲ませました。

すると母は「ごめんねぇ。」と落ち着きを取り戻し、会話も正常になっていきました。

母「トイレに行こうかな」と立ったので個室まで手をつないで連れて行ったら、

母「あったかくて気持ちの良い手だ~」と喜んでくれました。

その後は父と私は晩酌をしながら夕飯、母は機嫌よく液体栄養剤(エンシュア)を飲み

最後には玄関まで二人で送ってくれたのでした。

玄関までの見送りが、バロメーターです。

まとめ

中核症状や、周辺症状の対応に困ったら、

先ずは、否定しないこと。

うそは言わない、ごまかさないとありますが、

私はやさしい嘘やごまかしはアリだと思っています。

母「気仙沼には帰れるの?」

デラコ「元気になったら連れて行ってあげるから、まずはご飯を食べよう。」

母「帰る家はないよ。」

デラコ 「大丈夫。泊まるところいっぱいあるから。みんな待ってるから。」

そういうことで、本人は安心していきます。出来ない約束をするようなことは言わないように心がけています。

父は、生真面目な人なのでこれが難しいみたいです。

以前は父に同様の対応を求めましたが、あきらめました。

役割を分けることも大事ですね。

バリデーションの基本姿勢

基本姿勢は、笑顔、うなずき、共感です。そして、”寛容さ”です。

うまくできない日もあります。

そういう時は、「寛容になれない自分に寛容であれ」と

言い聞かせます。

自分のモヤモヤに対する共感も、心のオリを流してくれますよ。

がんばりすぎず、がんばる。そのバランスを大切にしたいですね。

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